《彼》との邂逅
もう二十年くらい昔のことになる。
やんちゃな小僧だった陰謀くんは、
あり余ったエネルギーを発散させるべく、
ある武術を本格的に習いはじめた。
そうこうしているうち、
武術のお師匠に気に入られ、外遊先に同行する機会に恵まれた。
貧乏学生だった陰謀くんは、
荷物持ちおよび雑用係として、
これ幸いとお供させてもらうことにした(^o^)
向かった先は、ヨーロッパの一国。
歴史のある古い国らしいが、
世界史の授業中は決まって居眠りしていた陰謀くんには、まったく未知の世界だ。
滞在先では、師匠の孫弟子にあたる白人男性が、丁重にもてなしてくれた。
師匠は系列の道場を何ヶ所かまわり、異国の門下生を前に、
武術のデモンストレーションをしたり、ちょっとした講話を行った。
当時の陰謀くんは、まだ十代で、
女の子に見間違われるような容姿をしていたので、
師匠は行く先々であらぬ疑いをかけられたりもして、
「陰謀をつれてきたのは失敗だった!」と、うんざりしていたようだ(^^;)
さて、そのうち外遊も残すところ二日となった。
その頃になると、陰謀くんは、
師匠の孫弟子の息子さんとも仲良くなっていた。
この息子さんの名前を、仮に『ウィレム』としておこう。
ウィレムは陰謀くんより二つ年上で、
バイクが好きだった。
その日の午後、自慢の愛車でやってきて、
「おもしろい場所があるから一緒に出掛けよう!」とウィレムが誘ってきた。
あらかた予定を消化して、ホテルの中で暇を持てあましていた陰謀くんは、
このあやしげなお誘いに乗ってみることにした。
ウィレムは武術の有段者でもあり、
わたしにしてみれば同門の先輩にあたる。
ドラッグなんかの匂いもしないし、たぶん大丈夫だろう(笑ぃ)
ウィレムのバイクに二人乗りをして、街を出た。
そして、山あいのワインディングを、
小一時間ほど、かなりの速度で駆け抜けた。
日本とスケールの違う広大な自然が、そこには広がっていた。
どこまでも蒼々たる山々が続いており、すれ違う車もない。
それなのに……と妙なことに気づく。
人通りもないのというのに、やけに道路が整備されているのだ。
あまつさえ、道路の要所らしき場所には、
警備兵のような者までが立っている。
まるで日本の原発の周辺のようではないか(笑ぃ)
「軍関係の施設かなんかがあるの?」
と陰謀くんが尋ねると、
「このあたりは私有地なんだよ。警備しているのは私兵」
とウィレムが答えてくれた。
余計な詮索はしなかったが、
ウィレムの親族の私有地ということのようだ(笑ぃ)
ようやくたどり着いたのは、なんとも古びた《史跡》だった。
古城か何かの跡地らしい。
バイクを降りると、ウィレムはついてくるように言って、
史跡の中へ入っていった。
そこには石段や石垣があり、
どことなく日本の城跡を思い起こさせる。
しばらく歩くと、ふいに広いスペースに出た。
三十メートル四方くらいだろうか。
中央に、大きな石碑のようなものが立っている。
「あれは何?」
陰謀くんの問いに、ウィレムは何も答えず、静かに合掌しはじめた。
ウィレムはキリスト教徒だったはずだが、
その姿は仏教や神道と、まったく同じだった。
陰謀くんもつられて、両手を合わせて石碑に祈った。
(このとき、急に耳のあたりが、ぼうっと暖かくなって、
強い耳鳴りをが起こったのを憶えている)
「さあ、帰ろうか」
ウィレムが来た路を引き返していく。
「このためだけに、ここに来たの?」
陰謀くんの疑問に、ウィレムは答えた。
「きみを、こちら側の世界につれて来たかったんだ」
『こちら側』って?
陰謀くんは首をひねるばかりである。
ふたたびバイクにまたがり、
滞在先のホテルに帰りつくと、
陰謀くんは部屋の時計を確認した。
そこでまた「あれ?」と首をひねる。
往復で四時間ほど出かけていたはずなのに、
二時間しか経っていない。
旅の疲れで、時刻を見間違えていたのだろうか?
いや、そんなはずはない。
陰謀くんの腕時計を確認すると、
きっちり四時間あまりが経過している。
これはいったい、どういうことだ?
わけがわからないまま、じきに夜が訪れた。
その日は、師匠を見送るために、
ちょっとしたフェアウェル・パーティが催された。
陰謀くんは未成年だったが、
ウィレムにすすめられるまま、
特別に『ワイン』なんかをいただいた。
すっかり酔ってしまい、前後不覚になり、
その後のことは、はっきりと覚えていない(笑ぃ)
そして……。
無事に帰国し、ヨーロッパでのことなど、
すっかり忘れかけていた半年後、
またしても「あれ?」と首をひねるような出来事があった。
身体測定の結果で、信じられないようなことが起こったのだ。
わたしの血液型が、変わっていたのだ!
測定しなおしてもらったが、結果はくつがえらなかった。
信じられないことだった。
わたしの両親は、いずれもX型だった。
その組み合わせでは、わたしの血液型もX以外にはなり得ない。
ところが、検査の結果では、わたしはY型になっていたのだ。
そのとき、わたしの脳裏を過ぎったのは、
ウィレムの口にした「こちら側の世界」という言葉だった……。
血液型が変わってからというもの、
わたしは性格や行動までもが一変してしまった。
おまけに、おかしな能力? みたいなものまでついたようだ……。
たとえば……。
常に耳鳴りがしていて、
なにか危険が近づくと、その耳鳴りが激しくなる。
阪神大震災の直前は、
あまりにも耳鳴りがひどくて、飛び起きてしまったほどだった……。
そういえば、この時期から、
わたしはどこへ行っても、
異常なまでに頻繁に『警察官』と出くわすようになった。
(おかげさまで、
ショッカーや死ね死ね団のみなさんも、手出しができないらしい……笑ぃ)
わたしは、
『こちら側の世界』に来てしまったのだろうか?
だとしたら、
これを読んでいるあなたは、どちら側の世界にいるのだろう?
考えるほどに、わからなくなってくる(^o^)
その後も、
ウィレムとは、しばらくペンフレンドを続けていたが、
彼が二十歳を前に留学してからは、音信不通になってしまった。
人づてに聞いたところ、
いまは帰国して、元気にやっているらしい。
連絡を取ってみたいような、
もう二度と会いたくないような、
そんな微妙な気分の今日この頃である(^o^)
それにしても、年々わたしの耳鳴りはひどくなる一方である。
しかも原因不明で、現代医学では手の施しようがないとのことだ。
まいったな ヽ(´ー`)ノ
(この文章はフィクションです……たぶん……笑ぃ)
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