23時の彼女たち
このところ、夜遅くまでトレーニングをしている。
利用しているのは、たいてい公共のスポーツ施設で、
午後10時過ぎまで、わたしは黙々と体を動かしている。
その時間帯になると、他の利用者たちは、ほとんど帰ってしまい、
施設の中は、がらんとしたものだ。
トレーニングルームの使用が終わると、
最後の利用者であるわたしは、
掃除と施錠を済ませて、鍵を返却しに事務室に立ち寄る。
午後10時を過ぎても、
事務室には二、三名の職員が残っている。
受けつけで応対してくれるのは、決まって女性の職員さんだ。
「おつかれさまです。
陰謀さん、いつもご利用、ありがとうございます」
そんなふうに、彼女たちはやさしく労いの言葉をかけてくれる。
「こちらこそ、いつもありがとうございます。遅くまで大変ですね」
わたしもお礼を述べ、
ちょっとした気づかいを口にすることもある。
そんな、ある日のことだ。
トレーニングを終えて帰路についたわたしは、
忘れ物をしていたことに気づいて、スポーツ施設に引き返した。
時刻は、すでに午後11時になろうとしており、
施設の閉館時間ぎりぎりだった。
大急ぎで事務室へ向かうと、
館内の消灯作業をしている女性職員さんと鉢合わせた。
いつもより館内が暗いからだろうか。
顔見知りの職員さんの無表情な横顔に、
深い疲労がにじんでいるように見えた。
彼女がわたしに気づき、急に笑顔をこしらえた。
「あら、陰謀さん。
トレーニングルームに、○○をお忘れになっていませんでした?」
「そうなんです。すみません」
「事務室に保管させていただいてるんですけど、
鍵を閉めちゃったんで、いま開けますね」
彼女は事務室に戻り、忘れ物を取ってきてくれた。
「たびたび、すみません。ありがとうございます」
わたしはお礼を言って、施設をあとにした。
駐車場から車を出すと、
バックミラー越しに、施設全館の明かりが消えるのが見えた。
あの職員さんも、これから帰宅するのだろう。
時計を見ると、午後11時をまわっていた。
いつからだろうか?
日本の女性たちも、ずいぶんと遅い時刻まで、働くようになったものだ。
深夜営業の店舗などでも、
日付が変わる時刻まで働いている女性の姿が、
いまどきはめずらしくなくなっている。
これも、男女共同参画社会が実現した証ということか。
働く女性の姿は、
わたしも素直に、いいものだと思う。
だが、あまり遅い時間まで働いている女性を見ると、
ちょっとばかり不安を覚えてしまう。
二十代から三十代の働く独身女性たちと話をすると、
残業をしたり交代シフトで夜更けまで仕事をすることなど、
ほとんどの人が当たり前だと考えているようだ。
そんな彼女たちに、わたしは訊いてみることがある。
「いまの仕事を、一生続けるの?」と。
大半の女性は、こういった感じで答えてくれる。
「結婚して、子供ができるまでは、続けたいですね」
そう答えながらも、
具体的に結婚の予定がある女性というのは、意外なほど少ないようだ。
仕事に追われて出会いがない、
というようなケースも、男女ともに少なくはないのだろう。
男の場合は、結婚をしようが子供ができようが、
仕事に追われ続ける人の方が、ずっと多いはずなので、
働くことを最優先する昔ながらの風潮というのは、
いま現在でも理にかなっているのかもしれない。
だが、女性の場合は、そうもいかないだろう。
子供を授かれる期間というのは、
人生の中でも、そう長くはないからだ。
そして、この貴重な期間は、
女性が社会に出て、仕事を憶えるのに必要な期間と、ぴたりと重なっている。
男女共同参画社会を強引に推し進めたことが、
未婚化や少子化の原因となっているのは、
もはや誰の目にも明らかではないか。
変わりゆく社会システムの中で、
女性だけが犠牲者になるという事態は、
看過するわけにはいかないだろう。
なぜなら、
子供を産み育てることができるのは、女性だけだからだ。
代わりのきく仕事なんてものは、
男どもに任せておけばいい。
そもそも、
『仕事』だとか『社会』なんていうものは、
子供を産むことができない男たちが、
苦しまぎれに産みだしたシステムに過ぎないのだから(^o^)
子供を産むというのは、
女性だけに与えられた尊い能力なのに、
その能力を活かさずにいるというのは、あまりにももったいない。
子供を産み育てるための大切なエネルギーを、
仕事や遊びで使い果たしてしまわないように、
ここを読んでいる妙齢の女性たちには、
くれぐれもお願いしておきます。
たえず変化していく世の中を生き抜くための本物の知恵は、
『バランス感覚』と『変わらないもの』の中にこそある。
生きづらい時代だけど、
『バランス感覚』と『変わらないもの』を忘れなければ、
きっと納得のいく人生を歩めるよ。
仕事も大事だけど、ほどほどにね(^o^)
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